1つの物を見るにしても視点が多いほうが得れる情報が多く気づきが多い。そしてその気づきが自分の発想力を育てる。今回は「言葉」を使う視点に立ち、自分の競技や日常生活で心がけている発想力を鍛えるためにやっていることを3つの習慣にまとめてみました。

自分の世界を広げる「言葉」

11月4日、日経新聞の特集ページに「スポーツが開く言葉のシンポジウム」にて、元陸上選手の為末さんや慶応義塾大学教授の今井むつさん、作家の堂場瞬一さんが「スポーツと読書の関係」について話し合った記事を読み、自分が意識している「あらゆる方向から考えること」の手掛かりを見つけました。

フェンシングでは自分が見ている正面の視点から答えを探そうとしがちですが、1歩角度を変えた場所から見ることで、また違った物の見方ができると感じています。

これは読書や言葉も共通していると思います。
読む本の分野や視点を変えてみたり、同じ意味でも違う言葉に置き換えてみると相手に伝わりやすくなったり逆にならなかったりと変化と学びがあります。

ここからは私が読んだ新聞記事での内容を含めつつ、自分の世界を広げるために活用したい「今すぐできる3つの言葉の習慣」をお伝えします。

時と場合で言葉を使い分ける

動作を伝えるには非言語化が効果的

言葉には非言語であるオノマトペがあります。
オノマトペとは自然界の音や声、物事の状態や動きを音で印象的に表した語です。
最近ではスポーツやダンスなど動作や感覚を使う際の指導に重要だとされています。

フェンシングであれば、足のステップの「タタタン」や剣を叩く動作を表す「パン」です。

よく選手同士の会話で「いまパン・パンって剣2回叩いたよね?」と優先権について意見しています。

感覚を掴むための擬音語

実は私、「感覚」という言葉が不安定に思えて好きではありませんでした。
言葉が略され、自分が上手く説明できないことに不安を感じていました。

しかし今は、その感覚を支えるために擬音語があり、人によって擬音語の捉え方が異なり、沁み込んだ感覚も人それぞれだと思っております。

まさにコーチがアドバイスで使う擬音語は感覚を掴むヒントです。

擬音語が伝わりやすい条件としては、動作と一緒に表現することです。
「ここはフッと動きにアクセントつけて」といっても「フッ」だけではあまりイメージができません。動きの解説として「フッ」があれば擬音語に意味が生まれます。

ある意味ボディーランゲージが言葉を作っているようです。

言語化することで筋道が立てられ明確になる

プレー中は非言語を頼りますが、プレー後の反省ではどんな言葉を使うかで反省の精度が左右します。

「集中できてなかった」や「気持ちが弱かった」など精神的な部分で済ませるのではなく、一体何が起こったかを細かく分析することが原因と結果を明確にします。

その分析をする際に「この重要な2つのことができないと分析も対応策もゆがんでしまう」と為末さんがおっしゃっていました。

  1. 大きい事から小さい事まで細かく分析すること
  2. 事実と意見を分けて整理すること

細かく分析することで原因や対処が1つではないことがわかります。
また事実と意見を整理することで自分の思考と現実のギャップを確認することができると私自身感じます。

反省の精度が上がると、プレー中の写真をコマ送りしているようなイメージになり、それが修正すべき感覚に繋がっていきます。

ひとつひとつの言葉に注目する

言葉には重い軽いがあり、当たり前に使ってしまうが故に言葉の意味が薄れてしまう時があります。

例えば「頑張ります」という言葉。
「頑張る」という言葉だけで会話は成立しますが、何を頑張るかをイメージできていなければ言葉はあってないようなものです。

よくフェンシングではプレー中にベンチや観客席から「ここ我慢だよ」という言葉が投げかけられますが、フェンシングにおいての我慢を理解していないとプレーには生かされません。

私が実際に経験したことですが、「我慢」の言葉はわかるけど、実際に何をすればいいのか説明ができないのです。

言葉的に我慢は辛い事を耐え忍ぶ意味がありますが、フェンシングでは無理にリスクを背負って点数を取りにいかないことだと後で認識しました。

このように私たちが当たり前に使っている言葉をもう1度再確認することで、今まで流して聞いていた言葉や雰囲気で使っていた言葉に息を吹き込みます。

そしてその言葉が今の自分に必要なものだったり、自分を助けてくれえるものだと気づきます。

頭を働かせて言葉を並べる

自分を整理したり表現する時に、私はまず頭を働かせて言葉を並べるようにしています。
頭を働かせる第一歩が「イメージすること」です。

私はメンタルトレーニングでよく自分の良い状態と悪い状態を振り返ります。
担当の人からの質問で言葉が詰まってしまう際は、自分が思いついたイメージから言葉に置き換えるようにして説明をします。

例えば、良いときは自分の頭の中が広い草原のように何でも受け入れることができる状態だが、悪いときは自分のキャパが小さく、自分の力では変えられないものを気にしてしまう。

ふと閃いたことやモヤモヤ浮いてきた思いを頭でキャッチし、それを言葉で再現することが自分を整理させる方法であり、自分自身を言葉で定義することになります。

この作業は時間がかかることがあり、なかなか答えが見つからず苦戦することもありますが、何かを変えられたと実感できたら自分が1つのハードルを乗り越えた気分になり、嬉しさと自信になります。

読書や言葉を通じて自分の思考を幅広く

言葉は自分と向き合い、世界を広げる1つのツールであるので、これからも多くの言葉と出会い、自分の言葉を磨いていきます。

また「時と場合で非言語と言語を使い分けること」「ひとつひとつの言葉に注目すること」「頭を働かせて言葉を並べる」ことはスポーツに関わらず日常生活でも実践でき、考える視点の角度を増やすきっかけになっています。

私は上手くやろうとすると真面目になり過ぎて遊び心が働かなくなるので、縮こまらないためにも様々な立場に目を向けていきたいと思います。