DSC_0025

今もっとも必要な課題に取り掛かることが目的達成への近道です。
振り返りは今の現状を知り、自分に足りないものを見つけ新しい目標を得ることができます。
その過程を見える形で記録することで時には自分を支えとなります。

ノートで振り返り気づかされる自身の成長過程

11月4日に味の素ナショナルトレーニングセンターで「2018年度シニア女子フルーレランキングマッチ」という試合を行いました。

結果は76人中14位。
ベスト8をかけた戦いで、昨年の全日本選手権2位の選手に15対12で敗れましたが、2回戦で対戦したロンドンとリオ五輪の代表選手に初めて勝つことができました。
9月に行われたシニアの試合と比べると確実に実力を積み上げているのを感じます。

私は試合が終わると必ずフェンシングノートに試合の反省を書き、試合を振り返る内容がより戦略的になってきました。

今までは「もっと○○する」という振り返りが、「相手は○○の状況で○○をしているから、私は○○の技で対抗する」といった理論的な考えに変わっています。

寮の後輩との会話で「梅ちゃんさんは理論的に考えすぎですよ!」と言われた時は「初めて理論的と言われた。嬉しい!」と心の中で思っていました(笑)

自分の変化は自身ではなかなか気づきにくく、人に言われて知りやすいものだなーと感じます。しかも人から言われたほうが、良いことも悪いことも素直に受け止めることができます。

私は自分の変化に気づくためにもノートに書き、自分を客観的にみるようにしています。
中学2年生から始めている「フェンシングノート」やプライベートを書きたい時用に日記を活用しています。

フェンシングノートは現在33冊目です!

自分の頭の中をノートに再現するように書き、内容を振り返ると「なんでこう思ったのだろう」と追及したり、時間が経つと「あの時にこれがあったから今があるのか」と確認できて面白いです。

毎日の学びがあるだけに、記憶に留めておくのはもったいないです。
特に失敗の経験は学びのチャンスなのに、自分の都合の悪いことを忘れてしまう「自己保存の法則」が働いてしまうので、リアルな経験を忘れないためにもノートに記録しています。
振り返ると「あの時は本当に悔しかった。もうあんな思いはしたくない!だから今を頑張ろう!」とモチベーションにもなります。

また私にとって試合は最大の練習です。
試合は心技体の良いところや伸びしろが一度に露わになります。それを振り返ることで、次への課題が明確になり「今の自分にもっとも必要な課題」を最優先して取り組むことができます。

目的と目標を明確にする試合後に行う私流の振り返り方法

これは私に基礎を教えてくれたコーチや尊敬する人のやり方を取り入れ、自分の試行錯誤のオリジナルを入れてできた方法です。

【ステップ1】思いついたことを書きだす

試合後の始めにすることは「何でもいいから書き出す」ことです。
結果に対する感情や試合中に意識したこと、何が上手くできて課題は何なのかなど頭の中でぐるぐるしているワードをノートに書きだします。

これは試合が終わってなるべく早くこの作業に取り掛かります。
国内での遠征では帰りの新幹線で書き、心がホットな状態で記録することを心がけています。また移動中にこの作業を済ませると、帰宅したら次のステップに取り掛かれるので効率的にも良いです。

私は一通り書き終えると、自分にインタビューをするように「何でそう思ったの?」「他には?」と問いかけながら深堀を進めています。

【ステップ2】試合の映像を分析する

試合では毎回ビデオカメラを使って映像を記録しています。
ビデオは自分で録画をできるように三脚を使います。
映像を分析する際にはノートに試合展開や、何で点を取ったのかを書き込みます。

試合の分析方法

まずノートを3等分するためにペンで縦線を2本いれます。

  1. 映像を見ながら試合の流れを書き込む(3等分したノートの左側に)
  2. 自分の得点を左側、相手は右側に数字を入れて書きます。

    • 書き方の例
    • vs ○○
      ① アタック
      アタック①
      ② リポスト



      (1セット5対2)

    アタックとは攻撃のことで、リポストとは相手の剣を防いで突き返すことです。
    またセットごとに何対何だったのかも記録すると、前半と後半での試合運びを見ることができます。

    このように書いていくと、勝敗をは左右したのはいつかといった「勝負の分かれ目」を確認できます。

  3. 得点した状況を詳しく書き込む(3等分したノートの真ん中)
  4. 何で得点をした、されたかを書きます。
    例えば「自分のフェイクで相手が止まった瞬間を突いた」「相手の体勢はこう」など。
    ポイントは後で自分が読み返してもイメージをできるよう書くことです。
    私は実況アナウンサーになったつもりで行っています。

  5. アイディアを書き込む(3等分したノートの右側)
  6. 「もっとこうすれば良くなる」
    「あの時にこの技をするべきだった」

    といった今だから思いつくことを書き込みます。
    私は自分のコーチになったつもりでアイディアを出します。

  7. 自分の得点と失点を数字から読み解く
  8. 1での記録を使って得点の技の種類や点数を書き込み、相手に何で点を取って何で取られたかをまとめます。

    • 書き方の例
    • 取った点
      アタック 正
      リポスト一

    「取った点」と「取られた点」を並行して書くと比べやすいです。
    自分が点数を取っている技の傾向や苦手としている相手の技を知ることができます。

    また私は取られた点を見るときに、「自分のミスか相手の狙いか」に注目します。
    自分のミスであれば、ミスせずに成功した場合のスコアを出します。
    そうすると「この技の正確性を上げたら何対何だったな」と前向きに振り返ることができます。

    また相手が取った点から「この技やってみよう」と発見があるので引き出しを増やす練習になります。

【ステップ3】取り組む課題と実行方法を決める

ステップ1と2をもとに今後の取り組み課題を組み立てます。

課題を書き出し「どうしたら克服できるか」の方法を立案し実行します。

その課題はどの場面で鍛えることができるのかを把握し、その練習場面で取り組める課題に挑戦します。

今の課題を克服するために明らかにした具体的な方法を意識しながら取り組み中

私が取り組んでいる課題の1つは「腰の位置を一定にして動く」ことです。

腕を主体とするスポーツにとって腰はバランスをとるポイントになります。
試合の映像を振り返ると攻守の切り替えの動作で、腰の位置が上下に動き軸がぶれている状態になっています。
軸が不安定だと瞬間的なチャンスを掴めません。また態勢が崩れやすくなるため相手に隙をみせてしまいます。

そこで私は「腰の位置を一定にして動く」ために、フィジカルトレーニングとフェンジングの実践練習から改善に取り組んでいます。

フィジカルトレーニングでは、スクワット動作のフォームを気にしています。
スクワットで下に行くときは膝で曲げずに、骨盤から収縮するイメージを持ちながら行い、上がるときは最後までお尻の筋肉で押し出す意識でやっています。

フェンシングの実践練習では、フィジカルトレーニングで掴んだ骨盤周りの筋肉を使って動けるように訓練をしています。

今は意識しないとできませんが、早く体が染みつき自然と腰が一定に動けるようにしたいです。

腰が一定に動くと肩に力が抜けやすくなるため、剣の操作がしやすくなります。
剣の操作がしやすくなれば、剣の操作を使った戦術で戦う自信がつくので「相手の剣の動作」を注意深く見るようになります。

見るポイントが増えれば、相手を崩す突破口を見つけるヒントが増え作戦を練りやすいです。

フェンシングは1つの動作が変わるだけで、直接的だけではなく間接的にも点数に繋がっているので、つくづく深みのある面白いスポーツだと感じます。

これからも続く試合で自分の成長過程を確認しながら、目の前の課題をクリアし続けます!